杉の肌/
黒田康之
杉の木の地肌には
落雷の焼け跡があって
炎の枝を広げたその後に
彼は大きな枝をまた伸ばした
彼の肌には苔のいい匂いがあって
失ったてっぺんを補うくらいの広い枝を
私の上でざわざわと音を立てて揺らした
何度も甲高い鳥のいくつもの声が空から降った
抱きしめる以外に私は愛の言葉を持たなかった
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