ある凍てつく湖の話/由比良 倖
 
夜、

暗緑色の

霧に覆われた

小さな凍った湖に、

静かに霧を割って

一羽の

羽の弱った小鳥が

落ちてきました。

すると湖は音もなく割れ

やさしく

あたたかく

小鳥を向かえ入れたのでした。

緑の霧に包まれた

暗い、静かな夜でした。

小鳥のきえかけた小さないのちだけが

うす黄色くぼんやりと

またたいているのでした。

次の朝

霧を溶かす

淡い陽が差したときには、

その底に小鳥の静かな眠りをたたえた

湖は

いつもと変らぬ

青く冷たい静寂を

人間の目には

見せていたのでした。
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