ある凍てつく湖の話/由比良 倖
夜、
暗緑色の
霧に覆われた
小さな凍った湖に、
静かに霧を割って
一羽の
羽の弱った小鳥が
落ちてきました。
すると湖は音もなく割れ
やさしく
あたたかく
小鳥を向かえ入れたのでした。
緑の霧に包まれた
暗い、静かな夜でした。
小鳥のきえかけた小さないのちだけが
うす黄色くぼんやりと
またたいているのでした。
次の朝
霧を溶かす
淡い陽が差したときには、
その底に小鳥の静かな眠りをたたえた
湖は
いつもと変らぬ
青く冷たい静寂を
人間の目には
見せていたのでした。
戻る 編 削 Point(5)