私は私以外の何者にもなれません/こたきひろし
 
私はカフカの変身を読んだ記憶はありません
小林多喜二の蟹工船も倉橋由美子のパルタイも読んでません
ただ書店で何度か本を手に取った記憶はあります

私は芥川龍之介の芋粥は完読しています
太宰治の走れメロス読みました
吉行淳之介の原色の街も読みました
五木寛之の朱鷺の墓は読んでしまいました
それらは書店で買って読みました
どこかの図書館で読んだ訳ではありません

だけど気づいたんです
気づいてしまったんですね
小説なんて読むものじゃなくて
自分で書くものなんだって
それからの私は小説一切読まなくなりました

だけど小説書きたいなんて漠然とした発想に過ぎませんでした

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