風の歌を耳に/道草次郎
{引用=あるものがそのものの底をいっかい弾き、とびあがりじぶんや何者かのもとへ訪ねてくることをかんがえていましたが、それはちがったかんがえでした。だってあらゆるのものが、いったんそのものの底を弾いた歌そのものだからです。
ふぶくと、ほんとうに無数の雪片です。それら一つひとつのひとひらのよって立つところの淵を撫でれば、これはたまらなく無私な、励起し、または滅する歌とみえます。
月見草という花もそうです。あの薄黄色なはなびらのいろのそうなってきた歴史や想いは、あれは何かであることの軛をすっかり忘れたつゆ霜みたく透明です。西方へ向き、夕焼け小焼けのしらべ以外を知らないばかりか、泪のあつまった
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