もうひとつ/妻咲邦香
もしもあの時
もうひとつの道を選んでいたら
今の私に出会えただろうか?
道しるべのない道の途中
知らずにすれ違う自分に
どんな声をかけただろうか?
もしも今の私より幸せそうだとしたら
どんなにか心が安らぐことでしょう
幸せなもうひとりの私がいることで
どんなにか救われることでしょう
「はじめまして」
「こちらこそ、はじめまして」
大切なものは何ですか?
いつもそばにありますか?
嬉しい事そのままで
悲しい事そのままで
悔やめるうちはまだ
幸せなのかもしれない
「それじゃお元気で」
「身体に気をつけて」
笑顔でお辞儀しながら帰る
それぞれの待つもうひとつの場所へ
嬉しい事そのままで
悲しい事そのままで
二度と会うことはたぶんないと
知りながら
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