尾びれうつくし/道草次郎
よいものがよいというのはすてきなスギ木立だね
そうそうフィトンチッドというのでしょう
なつかしくそれは善意のまるで濁点だから
それがそうあることは
いよいよ意味の肌気を脱ぎ始めるというもの
いろんなものが
いろんな人に気に入られなくって
ずいぶん泣いた浜辺の蟹や
ひとつのものがひとつの人にも
届かず消えたよだかの星も
そのどれもがどれもにとっての星ならば
降ってくるよいもの抱きとめる森や木やらは
では何だろう
ここに何かをおくでなし
おくでなしだがひく影の何かあり
そういうことの模糊なあぶみをゆるしておくれ
こうとしか言えぬこともあるようで
さもありなん
なん
なん
なん
それならそれも
一夜の夢のほとりに翻る魚
ぷかりぷかりとなにか言いたげ
けれども
いえずじまいに海帰る尾びれうつくし
月光に映え
ああ
それ
月こうにはえルヨ
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