ある巨人の話/由比良 倖
 
あるとき彼は巨人になりました
大きくて温厚な男でした
巨人になった彼は街のビルディングに鎖で縛られました
ビルディングの下を通る人たちは
彼を見上げながらも早足で駆け抜けました
ビルディングに客は来なくなりました
四階にあるおもちゃ屋は閉店しました
巨人になっても彼は暴れませんでした
彼に笑いかける人もありました
彼を不気味がる人もいました
彼はじっとしていました
彼は何も食べずにじっとしていました

あるときもう一人の巨人がやって来ました
女の巨人でした
彼女もまたビルディングに繋がれました
彼女の前を車がびゅんびゅん走り抜けます
彼女に踏みつぶされやしないかと
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