隕石のながい尻尾/
道草次郎
ことだ。
気分を変える為にベランダに出てみることにした。ベランダは街路とは反対側の西南の区画に面しており、沈みかけた夕陽がいままさに斜めから差し込んでいるところだった。手にしたリキュールが赤紫に染まる。グラスが風になぶられると血の海が美しく揺らぎ、そのたびに、むかし恋人と行った炎海(千年に一度だけ現れる幻の海。いくつもの河川が同時に増水するとき、広範囲にわたって生じるデルタ状の擬似海。水の色は普通)ほとりでの事が思い出される。
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