あぶくみたいに湧いてきた謎のものたち/道草次郎
「石か水たまりか」
放物線を描いて水たまりに落ちる小石が起こす波紋が言葉だとしたら、その言葉は石の言葉か、それとも水たまりの言葉か。
「謎」
数年前知らない街で車を運転していて道に迷い、ガソリンをだいぶ浪費してしまった。そのことが何故かいま申し訳ない。いま、たったいま不意にだ。
「賞」
それでもやっぱり賞は欲しい。賞金も欲しい。けれどもやはり賞などいらない。賞などいらないが賞金は欲しい。いや待てよ。賞金すらいらない。希望が欲しい。つまり、全てが。
「来歴」
ほんとうのぼくはどこにもいない。かつてみたそぐわない詩の夢は鉈の味がした。黴臭い洋書に跨
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