過去から歩いてきた血液 他一篇/道草次郎
「過去から歩いてきた血液」
十四の頃眠れず、深夜に目覚まし時計の強化プラスチックの蓋を無理やりこじ開け、中の秒針をもぎとった。その時不用意に人差し指の腹の部分を切ってしまい、少なからず失血があった。血は滴り、数字の5と6の間の溝にまで達した。些か狼狽えたものの、三枚重ねのティッシュを湯に濡らしいまだ鮮血状態の血液を拭った。指にも傷絆創膏を貼った。しかし、どうして拭き切れず溝には赤黒いシミが残ってしまった。今も残っている。黒い点として今、眼前にある。物置の工具箱をひっくり返し一番鋭利な錐を持ってこよう。黒い点目掛けて突き刺すのだ。慎重を期してこそぐ様に打刻する。すると、1ミリの何分の一かの微か
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