夜の夢の分裂、他三編/道草次郎
 
徳心でもあるでしょう

夜は長いかみじかいか、大変な難問なのかなんなのか、わけもわからずただ河は流れていきます

そうして、散乱する意識片はまるで暗箱の蛍

二つのものが一つところにあるならば、それは一人を二人でやるようなもの、統合されたもののようなフリをして、歩いていたならそれは確かにその人は大変優しいということでしょう

ならばみんな優しくて、夜ばかりがかなしい
夜は男です
この比喩の素姓は女ですけれど、男で通った夜なのです
だから夜はつくづく直喩(シミリ)ではない
およそなにものでもないところの男として
それはかかる零時の一刹那なのです

なに一つとして手に残らず、このまま海へうつくしく眠りにいきます
海豚にでもなって、夜の間ずっとお月見をしながら遊んでいましょうか

二つのものが一つところにあるということは、だから、こんなにも透き通ったゼリー状の海豚でもあるという詩想に他なりません}



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