夜の夢の分裂、他三編/道草次郎
「墓石」
それはいつからかはじまり気が付くと終わる
そのようなものをさがしたら
じつにそのようなものしか無く
それはすべての核部へ到り
かつぬけてゆく風やうたであった
なので却って太陽はひくい
まるで鮃のようなものだ
旅程に斃れた巨人らが蝟集する遠方のたたら場は
さしずめ象の墓場である
または
円環のくろがねの島だ
「鏡の森」
書かれている事ではなく
書かれていないことがその詩を包むように
香気はその人を包む
その人のことばは滝だ
まるで滝だ
その人は大地ではない
その人自身は滝の飛沫の破片だ
あらゆる極小の水滴も
照応する世界がおとす涙
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