実感は理性的じゃない/ホロウ・シカエルボク
 


雑居ビルの片隅の
空き部屋みたいな光景が
心情として焼き付けられていた


雪の夜


悪魔が暖炉を探して
往来を彷徨ってる
人々は戸を閉ざして
気の早い春を待ちわびている


俺たちはワルツを聴いた
ディスクをセットして
時節や曜日なんかが
床の塵になるまで
お前は知ってるフレーズをハミングし
俺は歯の裏でハイハットの真似事をした


二軒先のドアを
ノックする音が聞こえる
時計は真夜中あたり
訪問には適していない
やむをえない用件かもしれない
当人にしてみれば
考えたくもないような


俺はコーヒーを注いだ
歯を磨いてしま
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