五惑星物語/道草次郎
「炎の惑星」
炎暑で痙攣する夏空の真ん中
涼風吹き込む洞窟に
途方もなくでっかい入道雲が
安置されている
SはNのプラグマティックな個室で
SF小説を嘗めたりして
可愛い旧式のロケットに跨る
カレーっぽいお皿三枚
水道の水がまだ生温いうちに片付けて
滴ったすべての汗で出来た塊が
じつは海となるのではないか
という仮説を打ち立てる
あの燃え盛る太陽にだまされた
不具の海としての空
という幻想に向かって
「雑踏の惑星」
互いに殺戮し合う運命の
三葉虫が
脳漿を泳ぎまわっている
死はアドレナリンに包囲され
躍起になった小下垂体は
革命のよう
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