窓がある/墨晶
 
 黄色い昏冥の家路
 その途上 突如
 視界に広がる路地裏は
「こんな場所に」
 学習塾兼文房具屋が
 塗装が剥がれた看板のパン屋が
 足踏みオルガンの音
 すべて他人たちの 見覚えのある時間だ
(ほら)
 線路沿いを往けば
 もうすぐわたしの住む町の駅だ
(歩いてみてください ときには)
「何故こんなに
 わたしの衣服を切り裂くのですか」
「きみにはいま 窓がある」
(だから もう逃げなくて良いんです)
 誰だ
 わたしと 霊媒 そして?
 無音の喝采がすべてを肯定する
 許された慟哭
「きみにはいま 」 
 
 
戻る 編 削 Point(1)