音楽へのオマージュ(補遺)/道草次郎
 
「はじまりの小詩」

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洗面所の
鏡の前に立って
歯みがきをしていると
朝の光が
横顔を洗った
ふり向くと
トイレのドアが笑った

このとき
ぼくの何かは
まだ眠っていた



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「エリーゼのために/ベートーベン」

想いをつづる
手のふるえ
夜毎募るは
引く潮の哀しさ

こころは
浅瀬を漂い
明けを焦がれながらも
月暈にしたしむ

やがて
想いは春の野へ
軽やかな足取りは
子兎に似て

ひた走る
鼓動の純粋

ふと
階下に
転げ落ちる想いの
切れ端
夢の
うつくしき終焉


「人形の(ための)セ
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