人生は楽園/こたきひろし
 
雨の匂い
それは鼻先で嗅ぐ匂いじゃなくて鼻腔の奥の粘膜に染み込む匂い
終日降っていた雨に気持ちが鬱がれるのは誰にでも起こる現象だ

一日の仕事から解放されて退勤のタイムカードを打刻する
作業服に降って積もった疲労感を払い退けながら勤務先の駐車場迄歩く
途中雨に濡れてしまうが傘は持ってない
車で毎日通勤していると雨に鈍感になってしまう

傘をさす必要なんて感じなくなっていた
車迄ダッシュすればいい事だ
多少濡れてもかまわない
傘を持って歩くのは煩わしかった

傘をさしてもまったく濡れない訳じゃないし
傘の下になると鬱陶しい雨音を聞かなくてはならなくなる
それだけじゃな
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