鱗粉/TAT
 


広島の
薬研堀の
UCCのネオンの下で
細い手首を掴んで引いて
キスをした
人目も憚らず



午後八時半の
アゲハチョウは
「じゃけ関西人はずるい」って
呟きながら
それでも応じてくれた




去ってった後の
俺の手には鱗粉が残り

あの夏の

黒いドレスの

アゲハチョウは



片面だけのタイムカードを一枚きり


あの店に遺して消えた










らしい












あれからもう八年経つけれど

俺は未だにロキソニンが手放せないでいる







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