焚き火/道草次郎
 
いい詩に接すると
ほんとうはとてもつらい
これは
ふくざつな感情のつまらない吐露だから
あんまり意味がない
だから言うだけ言って
それきりにします
……、
でもやっぱり、
二つあるうちの一つの目は
たとえばナンシー・ウッドの
『今日は死ぬのにもってこいの日だ』の
つぎのような詩句にふれると
ふるえ、おののく。
おおきな魂があること
それに気付く、のだ

たぶん、君自身になるってことは
泣き叫ぶ嵐の中に、君独りいるってことだ、
そのとき君が求めるすべては
人の焚き火に手をかざすことだけ。

金関寿夫訳


これから
あと、どれだけ
あと、何回
打ちのめされるだけの力が
この自分にはあるか
読むことは
もう、ほとんど泳ぐようだ
目がしらの熱さは
冬の星座で冷やそうか、などと。

いい詩に接すると
ほんとうは
世界に
溢れ出してしまいそうな
自分が
少しこわい。


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