光の言葉、水の言葉、石の言葉/道草次郎
 
「男の最期」

「砕けたガラスと現実はよく似ている…」、破片に映る空を動く雲がそう言った気がした。地に斃れた男の最期の思考はそのようなものだった。それは、まばゆくも暗くも無かった。ただ意識が遠のき世界が白んだだけ。音がなくなり風が途絶える。それだけだった。一つの帳がおりる。それっきり男は宇宙に存在しないものとなった。広い荒野に、風。風の音が聞こえている。ただ、風のおとだけが。


「木言葉」

木は黙っていたのではない。いつも言おうとしていたのだった。しかし何故かつっかえてしまい、あと少しの所で、言葉は出てこなかった。そのようにして木の喉元には花開かなかった未生の言葉がどんどん蓄積さ
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