唄/為平 澪
 
── 唄は、
    広大な大陸で帝国を作りあげ
    極寒の魂は白鳥に身をやつして岬で嘶き
    地雷で吹き飛んだ脚、
    長靴の音だけ残る国

             *

最もよき者の声も攫われて帰らず
残れる者の頭もまた、攫われて返らず

歳月を背負い 傾いた空の下
嘯いた笑いを浮かべ 生涯を費やし
諳んじる唄に唇をかむ

朝の光が頭を撫でてくれるまで
死んだふりなどしてみれば
瞼の海から
唄がこぼれる

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