唄/為平 澪
最もよき者は攫われてしまった*
よき者の言葉は封じられ
足並みをそろえる、その旋律だけは大切にされた
皆、同じ顔をして右を向き前に倣う
*
── 唄は、
ほら吹き、笛吹き、炎吹き、
人々は群れ成し、肩組み、唄を歌い、姿消し、
── 唄は、
寝た子を起こす子守唄
親の声だと信じる子供
(騙されてはいけないよ!
(あれは人さらいの笛の音!
叫んだ者たちは喉を潰され書いたものは指を折られる
抗いようもない巨大なメロディーが頭から浸入して
足裏を断崖まで運ばせない道の上を歩かせた
──
[次のページ]
戻る 編 削 Point(5)