唄/為平 澪
 
最もよき者は攫われてしまった*
よき者の言葉は封じられ
足並みをそろえる、その旋律だけは大切にされた
皆、同じ顔をして右を向き前に倣う

             *

── 唄は、
    ほら吹き、笛吹き、炎吹き、
    人々は群れ成し、肩組み、唄を歌い、姿消し、
── 唄は、
    寝た子を起こす子守唄
    親の声だと信じる子供
    (騙されてはいけないよ!
    (あれは人さらいの笛の音!

叫んだ者たちは喉を潰され書いたものは指を折られる
抗いようもない巨大なメロディーが頭から浸入して
足裏を断崖まで運ばせない道の上を歩かせた

──
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