淡哀しく雪が降る/塔野夏子
意識の表面に 皮膜のように貼りついた
夢を剥がす 淡哀しく雪が降る ログイン
ログアウト 扉の向こうに 景色をしまい込んだまま
日々は眠る ログイン ログアウト 小さな痛みが
星のように瞬く 淡哀しく雪が降る ひとりでに
頁は繰られてゆき 見えない手が なにごとかを
書き記す あるいは なにごとかを消してゆく
ログイン ログアウト 剥がした夢は まだそこで
うすく虹色に光っている 神話がすすり泣いている
子どもたちが 窓のふちから こぼれてゆく
淡哀しく雪が降る 夢を剥がされた
意識の表面を グレイの風が吹いてゆく ログイン
ログアウト 行方をなくした道が 宙を漂っている
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