リンゴを貰う/道草次郎
 
色付いたリンゴの葉っぱに朝日が差していて、とても綺麗だった。収穫されたリンゴの実は軽トラックの荷台に載せられ、ちょうど農協の選果場へ運ばれて行くところだったらしい。勝手口に出て車の掃除をしていると、向かいの畑から野球帽を被った初老の男性が近付いてきた。

ツチヤさんのお父さんだ。ツチヤさんはぼくの中学の時の同級生で卒業してからは一度も会っていない。ツチヤさんのお父さんは気さくな人で、今朝もそれは変わらなかった。

突然、リンゴをひと抱え戴いてしてしまう。
耳に伝わってきたのはツチヤさんの近況で、それは木枯らしのように胸を通り過ぎて行った。クラスで机を並べて勉強したツチヤさんは、今はケアマ
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