ブナを植える/山人
嫌いな仕事でもある。しかし、ここのところ、毎年ブナの植え付けを行い、夏に二回の下草刈りを実施し、ブナの生存を確認する。ここは良い土ではなかったはずなのにしっかり根を張って葉っぱもつけてくれている。それがひどくうれしいのだ。そして、注意はしているものの、うっかり誤伐してしまったブナには、もう一回幹のどこからか葉っぱをつけてくれ!と祈るのだ。
向こう何年かはこうして下草を刈り、意図的に成長を促すのだ。
ここ何年か、当森林組合所有の山林から用材用の樹齢百年以上のブナが伐られ搬出されている。しかし、機械力(重機類)のない当該組合は伐り出し作業や搬出作業はできないのが大変残念ではある。
私たちが植え付けたブナの稚樹が収穫期を迎えるころ、私たちはこの世に存在しないし、話題にすら上ることもないだろう。百数十年後、ブナの大木がゆさゆさと梢を揺らし、無数の野鳥が群がり、樹幹から流れ落ちた雨水が団粒構造状の豊かな土で濾され、未来人の健康に役立つ水を提供してくれていることを願いたい。
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