とても広い部屋/道草次郎
蝶番が何億光年か先にある大きな部屋では
たくさんのことが大変だ
想像してみて
太陽系はその部屋の住人の
鼻の穴の鼻毛のそよぎのようなもの
鼻毛を横切る彗星とアポロの夢
エウロパの謎めく海と
怒ったイオの火山もそのなかに全部ある
テーブルのティーカップで
やっとアンドロメダ星雲だ
それから少し離れた所にある
腕時計は球状星団
その先はなんともはやの展開
ソファに行くには
恒星間航行が必要だし
お湯が沸いたのを
パルサーが報せても
駆けつける頃には
いつも凍りついているわけで
部屋の真ん中に
ドンと掲げられた大きな柱時計は
相対性理論のせいで
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