さよなら、どうせだしね。/月夜乃海花
でも、私にとっては成宮さん。貴方が兄を奪ったんです。もし、自分のせいで兄が虐められているのだったら止めることだって出来たはず。なのに、貴方は知らんぷりをした。見て見ぬふりをしたんだ!
手が震えてメモが書けなくなる。メモといっても字数が長すぎてメモでは無く手紙になってしまっている。
お兄ちゃん。そっと写真立てに手を触れる。
「お兄ちゃんは成宮さんと出会えて幸せだった?私は、ごめんね。少し幸せだった。ごめんね。」
涙がこぼれ落ちる。どうしてこうなってしまったのだろう。兄は何も悪くない。成宮もきっと悪くない。悪いのは見て見ぬ振りした大勢だ。
もう、つかれたよ。私。
そっとキッチンから包丁を取り出す。
「さよなら」
胸に包丁を突き刺した。
「お兄ちゃんと一緒に逝くよ。どうせだ。死ね。」
春香はそのまま倒れた。血の染みでベージュのカーペットが、バラバラになったメモがただ紅く染まっていった。
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