苔生した遺跡群の中の「SF(サイエンス・フィクション)」/道草次郎
自分は、昔からサイエンス・フィクションを愛してやまない人間であった。昨日、ある詩人の方が投稿された詩を読んでいて、忘れかけていたそんな思いが胸のうちに甦ってきた。
自分はかつて夢を見ていた。SFの夢である。それはアルタイルの原人が金魚すくいを思い付き、比喩の構造に胸を打たれ分析哲学に至るまでの冥い道のりをたんたんと描く、そんな風変わりな物語だった。或いはそんな物語が沈積してゆく幻の断片であった。
そこには、銀河帝国も量子テレポーテーションもダイソン球も出てこない。華やかなものは悉く墓の下に息を潜め、並行進化の俤すらその物語には見出すことはできない。そんな物語を何度か夢想の庭に紡いだ記憶
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