『冬の星座』のために/道草次郎
こんなのが書けたなら、もうおしまいにしてもいいな、とおもう。
冬至を過ぎた。
暦には雪の結晶。生まれくる雲には仄白い涙跡。かなしい。常緑のものだけが空にたくましい。石炭紀の繁茂の俤と、梢にチラつく褶曲地層のまぼろし。
空気の匂いがとても古くて、うれしい。もうじき白い夢想の季節がやって来て、うつくしいものはみなより一層美しくなってしまう。
それもまた、あはれをさそう。
風だけがひとり初冬の柔らかな陽射しの中をかけてゆく。それを追うように、おとなしい燠が刹那、かっと赤い火花を宙に舞わす。プレアデス星団、万歳、と。
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