燃える秋へ捧げるもの/道草次郎
書かないでおこうと思うことはむろん書けばいいし、書こうと思うことの大抵はただ、書いてみればいい。信濃路の秋を作り付けのファンタジーに貶めることなく、どうやったらそこに厚みある輪郭と衒うことのない調べを添えられるだろうか。
ただしく考えることと、ただしくまようことが不断に入れ替わる、喩えるならばそんな寡黙な鉄砲をかつぐ猟師であれたなら、と思う。
カントリーロードを歩く背の高い男の背中。そんな偉大な秋の支点が欲しい。こうして書いているコトバも、一字一句残さず指の火で拾いたい。その場合、それが理性ではなく多くを汗腺に負うものであれば、尚、良いのだが。
野に、人のいたたまれなさは見当
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