フルートを吹く女 その他の人々/道草次郎
 
すす}る
従兄弟たちは絵手紙の
エッフェル塔に暮らしているそうだ
弟は熱帯に嫁入りした
子供たちはダイニングキッチンのテーブルの下に
ずっと隠れて驟雨(しゅうう)を凌いでいる
羊皮紙の巻物が列ぶ書棚から
メタフィジカルの烙印を取り出し
書きかけの原稿へ新しい薪(たきぎ)としてくべてやる
神経編みのセーターの袖が黒檀の机に触れると
僕の世界観は唯物論に仮装してしまう
僕の罪は僕の背中に凭れたもう一人の学徒だ
パイプの紫煙のたゆたう先
思い出すのはロジカルハイのメタンフェタミン
一種動物として具現し
僕は家庭に鎬(しのぎ)を削っている



「童
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