フルートを吹く女 その他の人々/道草次郎
 
「フルートを吹く女」

席替えされた感情は
放課後のアコーディオン
音符に躓き
無意味へ倒れる込むあたしは
音楽室の虜
いない恋人との連弾は
なぜかいつも
夕陽に染まっている
あたしは
風下には立たない
髪の結び目を
誰にも見られたくないから
フルートを吹いて
ハンカチをしまう
音色で描けたら
あたし
うろこ雲を
画架にしたい



「無口な漁師」

主語を殺せば
飛魚(とびうお)が空から降ってくる
聖なるものは
みな構文を欠くと思う
俺の寡黙は
俺の錨だ
広洋(ひろうみ)の真ん中では
直下型の
湯煙ばかりが
昇ればい
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