おきあがりこぼし/
道草次郎
齢九十四の祖母は
早朝仏間にて
おきあがりこぼし
をつつくのが日課だそうだ
親しかった誰かや
猫やに
ゆっくりと話し掛けながら
トン と
すると
おきあがりこぼしが
カランと
不思議な音を立てる
そのカランは
必ず一日一度きり
らしい
そんな話を
先日してくれた
今年の下半期で
一番びっくりしたのは
もしかしたら
この話だったかもしれない
そんなぼくを
コスモスがわらってゆれます
「まだ二ヶ月残っているよ」と
きっと
風の秋と一緒に
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