我らの言語はいつも爆発している/につき
 
ている
香りは爽やかに空へ
ひとりきりが嬉しいこと

たとえば
昼下がりの光りに
形見の茶箪笥の
黒檀は艶めき
沈黙のまま微笑むこと
失われないこころの物語

たとえば
冬が近くなり
ハナミズキが赤い実をつけても
なお大きな柘植が
真緑のままの葉でいること
まるで岸壁の松のように

言葉は霧のように立ちこめる
五里霧中のまま
我らは彷徨っている
邂逅した誰かへと
問いを投げても
誰ひとり応える者はなく

だから
伝えたいことは言葉ではなくて
その奥にあるもの
姿なく
形のないことを
伝えようとするとき
言葉に最初の火が灯る
小さく
或いは
思いもかけずに大きく
我らの言語はいつも爆発している
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