縁を歩く/六九郎
 


ひょっ
ひょっと
くいっくいっ
ひょっ
ひょっと
くいっくいっ

縁を歩いている
縁と言っても樽の縁であり
樽と言ってもただの樽ではない
縁の幅は一尺ほどもあろうか
それほど大きな樽である
薄開けのぼんやりとした光の中
足下は見えているが
向こう岸はぼやけて見えない

ひょっ
ひょっと
くいっくいっ
ひょっ
ひょっと
くいっくいっ

その縁の上をよろよろと
裸足の足を前へ出す
ここはおれの世界であり
これはおれの樽である
この樽の横にはまた別の樽が並んでおり
その樽の横にもさらに別の樽が並んでいる

ひょっ
ひょっと
くいっく
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