避難勧告/六九郎
 
学校嫌いの子供達の集合思念は小さな渦を作ることがある

生まれては消え消えては生まれるその渦は、ちょっとしたはずみに寄り集まって一つの大きな渦となる

子供達の思いが強いほど、渦の中心気圧は下がっていく

そうして渦は今や巨大な勢力を保ったまま子供達の住む街を目指して進む

吹き荒れる暴風と稲光の前になすすべもなく立ち尽くす大人達

学校を吹き飛ばす
校庭もプールも吹き飛ばす
先生を吹き飛ばす
嫌いなやつを吹き飛ばす
塾も宿題も吹き飛ばす
テレビもゲームも吹き飛ばす
車も信号も吹き飛ばす
運動会も発表会も吹き飛ばす
部活も顧問も吹き飛ばす
鬱陶しいもの全て吹き飛ばす
家族も家も吹き飛ばす
逃げ遅れたものすべて吹き飛ばす

すべてを吹き飛ばした後に残るもの
それが次の新しい世界
学校嫌いの子どもたちの学校嫌いの子どもたちのための学校嫌いの子どもたちによる世界

学校嫌いの子供達は
眩しそうな目をして新しい世界の幕開けに立ち会っている


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