Poetry Road ――ある朗読会の夜に――/服部 剛
テレビの中の壇蜜さんが言った
「コロナウイルスの影響で
私たちは人生ゲームの双六(すごろく)の
プラスチックの車に乗せられた
エノキみたいに顔の無い人形になった」
元来、僕等はエノキじゃない
今も体に血は巡っているし
声も出る
知らないうちに乗っていた
プラスチックの車から下りよう
今すぐに
そして、ひとりの時間に紡いだ
詩の言葉の欠片(かけら)たちを美しく、吐こう
あなたの言葉 私の言葉
彼の言葉 彼女の言葉
喜びの詩 怒りの詩
哀しい詩 楽しい詩
音程の無い音楽の言葉…言葉…言葉…
人間だけが発し、惑い、願い、語る
生けるエノキたちの言葉よ
それぞれの思いが交差する
令和2年10月11日の、二度と無い夜
閉じた目蓋の裏のスクリーンに
僕は視る
遠い青空にひとつある
あの浮雲の方角へのびてゆく
旅人の道
プラスチックの車から下りた
この足で?今・ここ?から始まる
本当の人生ゲーム
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