振り返ること?/道草次郎
毎日には言うまでもなく慣れてきていたし、場合によっては飽きてさえきていたのだが、そうしたさなかにありながらも、自身の真実の姿を直視せざるを得なかった瞬間が幾度となくあった。それは、こうした様々な体験を、個人的な幾つかの場面においていみじくも利用してしまった時である。
たとえば、先述した年明けに亡くなられた末期ガンの利用者の方についてがそうだった。それは当時付き合っていた彼女とちょうど上手く行っていない時期で、たしか友人何人かと食事をした時だったが、ぼくはなぜかその日は無口だった。元々複数人での雑談というものが極めて苦手ということもあったし、たぶん特に意味もなくそういう態度をとっていたのだ
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