詩は料理に似ているか/につき
 
に浮かぶ影
形なき我らの輪郭を確かめる術
そこにあるしみじみとした悲しみ
姿なき我らを吹き抜けていく言葉の残り香

詩はやはり
料理にどこか似ている
しかし
それはむしろ
晴れた十一月初めの正午に漂う
木犀の香りに
秋の支配する大気にこそ似ている

詩には
やはり影と憂いがある
それは
強い光りの下にはなく
どこか肉体を離れていくもの
舌の上にある甘美では決してない

ある日
途方に暮れた路上で
夜の秋風が吹き寄せた
月影には温かみもなく
香りもなく
ただ一層に美しかった
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