秋耕と幻想/道草次郎
 
算が合わないというのが常です。
 
 余技と言いましたが、いっときはそれでも、ある程度広い農地を鍬一本で開墾し、色々な野菜を育てていました。自分が二十代前半の時です。今思うと、何をやっているのかさっぱり判らないような時期でした。そんな事を来る日も来る日もやっていたのだから、自分も随分な変わり者です。まあ、それしかできなかったし、自分には車も無かったので、色々と、埒があかない部分もあったにはありました。そういう経験をしたというのを、馬齢を重ねたのち顧み、あれはあれで意義深い事であったと語る人がたまにいますが、とんでもない、自分などは唯々恥じ入るばかりです。やっと最近、それでも幾らかこうしてお話で
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