夜の通過待ち/
 



秋の虫たち るうるう

無残に刈られた草むらの

最果てみたいな端っこで

透明になる身体

開いた扉の

まっくらやみの先を

眼をつむったわたしは見ている

姿なき虫たち

愛でも希望でもなく

破滅を刻んだ翅を立てて

寒くもないのに震えるのは

あのひとが置いていったサンダルから

陽炎のように立ちあがる心残りを

冷やさないといけないから

お腹が空いたね

この電車

闇を照らすには足りない灯火

夜の通過待ちに

考えなければならないことがたくさんありすぎて

ようやくすべきことが見えたかのように

ひとりだけ

スマホの電源を切る




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