俳諧となり得ぬひずみの詩/道草次郎
激しい睡魔のおく目覚めろという地母神がいる
くしゃりとした醜い顔の小ぶりの神様だ
かつて山男だった冬
或いは漁師だった春があった
その時のお前は詩など一篇も書かずまた読まず居た
薮睨みの鷺が沢に経つのを煙草を吸いながら眺めたこともあったろう
鰆を無意に嬲っては帆柱に凭れ汐を聴いたそんな夕もあったろう
お前はいくつかの季節では馬であり
かなしみの落穂に屈む農婦でもあった
死人花が群がり咲く平野に駆け出す少女であった事もある
(この今の秋を千秋と称ぶ)
紅葉葉の上光纏う妖精たちもかつては神であり人間だった
(かかる日はかかる日の落し子として)
さんざめく?の大樹の
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