詩人達の夜/服部 剛
 
ずっこけて、転がって、這いつくばっては
立ち上がり(瞳はぎらりと、ぎらつかせ)
またずっこけて、膝擦りむいて、血糊を
なめ、それでもまだ夢を見て、今宵の夢
を見たくて ―この世界に恋がしたくて―
走り出さずにいられない。

 ああ僕はもるもっと!
 人という名のもるもっと!
 可哀想じゃないか、人間どもは
 この地上に放り出されて 

西暦二〇二〇年のコロナ禍の渋谷を行き
交う人々の幸福は、空気中に溶けている。
溶けてしまった幸福の風の行方に目を細め
辿るようにやってきた久々の渋谷道玄坂・
ルビールームに集う詩人達の夜(ここでは
人間の吐息と、朗読の声音(こわね)が飽和する)

 今宵はなぜか一人ひとりの
 赤いルビーの心臓が…脈を打ち
 自分色の、光を放つ   




   
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