振り返ること ?/道草次郎
無かったのだ。僕にとっての嫉妬の感情はあくまでも世間的な地位や名誉に依らない。それはたぶん、その人と精神的な交流があってはじめて生じる可能性のある何かだからだ。幼馴染とはずっと疎遠だったし、たまに年賀状をくれはしたが、返事を書く気にもなれなかった。
ぼくはたしか20代後半の時なにかの仕事を始めた。それと並行して引きこもりやNEETの居場所を作るため自助グループを立ち上げた。参加者は毎回だいたい10人前後。ぼくは主宰者を気取り司会役を務めた。すべての人になるべく分け隔てなく話をふり、訪れる人すべてに気さくに声をかけた。ある時は、それぞれが得意なことや趣味を持ち寄って小さな展示会兼発表の場を提供
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