夜を抱きしめて/山人
 
とてつもなく深い闇がやってきそうな夜
私たちはたがいに嘆き悔やみ
とりもどせない時間を語った

テレビはあいかわらず五月蠅い番組だらけで
MCの甲高い声だけが鼻についた

声帯をナイフで裂きながら
血だるまの赤子のような言葉を産み落とし
私たちは言葉でまじわった

その夜、闇はどうしようもなく深く
虫の音は未来への戦慄を感じた

私たちによってつくられた我が子の闇は
街のアパートメントの一室で
暗く広がり、膨満した脳を痛め
夢と現実のはざかいで硬く蛹となっている

小さく詩を書きながら私は
震える闇と一緒になって
近い未来の夜を
抱きしめている
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