母/道草次郎
もうおわりだと口に出して何度それを言ってそのたびに母の心をキリキリさせたか知らない
不登校だったとき
高校を3日で退学したとき
大学でうつになり死にそうだったとき
引きこもっていたとき
働き始めて死にたかったとき
そして先だって仕事をやめたとき
さらには
守るべきものができて
その子のために生きなきゃならないのに
死にたくなって
妻とぐちゃぐちゃになり
何もかも自暴自棄になったとき
さっきもぼくは
同じことをした
母にもうおわりだと言い放った
母はもう白髪混じり
古希をとうにむかえ身体中がガタガタだ
それなのにぼくは
子供のように
いや子供よりなお卑屈に
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