麦茶の味 /服部 剛
日頃ぐうたらな僕が
一念発起して
庭の草をむしり始めた
夏の太陽はぎらぎら笑い
ぽたり、ぽたり
滴(したた)る汗は目に沁みる
草のむしれる感触に
無心で熱中しながら、熱中症にならぬよう
傍らに置く、長い水筒
このささやかな労働も
今、調理の厨房で働くパートの妻と
支援学校で息子を介助する先生と
街の何処かで汗ふく友と
繋がっている気がして
次から次へと、手は草々をむしり
ひろがってゆく土の面積
ふぅっと一息ついた頃
草臥(くたび)れた男の影も陽炎(かげろう)にゆらめき
風はそっと過ぎて
水筒の蓋を開けて、飲む
冷えた麦茶はいつになく…うまい
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