猫のひげ/道草次郎
 
この先もこれまでもみな猫の洞毛(ひげ)※


望むでも希(ねが)うでもなく雲の蝉


尻取りをしたい宇宙の尻尾まで


雲ひとつぽっちゃり浮かんで嗤(わら)われて


答などノックする前から風で


オニヤンマオニヤンマとして零されて


秋空の下から見上げる空の宙(そら)


こんにちはやさしく言えたら死んでいた


マユゲまで描(か)かれた河原のただの石


手のひらでうそを匿(かく)して昼の月


うまれては消えうまれまた星の蠅



※猫のヒゲは洞毛と呼ばれその感覚は三叉神経により脳に伝わる。体毛の何十倍もの鋭敏さを具えるとされる。古くはペルム紀の哺乳類の祖に当たる生物にもこの名残はみとめられると云われる。

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