雨のあとに/道草次郎
昨日の大雨で生き返った緑
庭の一輪車にはたっぷり雨水が溜まっている
そこには逆さまにブナの梢が映っている
青空は青く
雲はわずかに漂い
オオキンケイギクの花は黄色い
大きなごわごわしたタオルケットを干そうとしたら
紛れ込んでいた靴下が土っぽい犬走におちた
なんということもないことが
ひとりでに起きてしまう
ぼくは腰をかがめて靴下をひろう
そこには
世界や言葉は入ってこられない
聴こうとすればきこえてくる
虫の声と風鈴の音
が、ただ在って
ただ在ることとは何かと
ぼくに問うている
戻る 編 削 Point(1)