蒸発/服部 剛
けせら〜せら〜
けせら〜せら〜
けせら〜せら〜
人差し指でなぞってみよう
我が道程（みちのり）を
ひも解いてみよう
引き出しの奥の日記に綴（つづ）られた
あの日の偽りなき言葉を
回っていた洗濯機が 人知れず 止まる
水位が 下がり はじめる
「脱ぎ去られた僕」も 底へ 沈む
隣の脱水機は 壊れている
音もなく ふたが 開（あ）いた
上から２本の大きな手が下りて来て
洗いたての僕の両端（りょうはし）を掴（つか）み 固く絞る
（ いてててて・・・ ）
ぽつり ぽつり 落ちる涙
ここまで来たら仕方ない
ベランダに 洗いざらしの「自分」を干されよう
うすっぺらでしめっぽい身に沁（し）みる
ぽかぽか日和（びより）
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